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種子島出身の岩元先生が今春4月より種子島医療センターの小児科に赴任してこられました。このたび離島医療塾に寄稿してくださいましたので紹介いたします。

岩元二郎先生

 

種子島医療センター小児科   岩元二郎

〇自己紹介

鹿児島県種子島の種子島医療センター小児科の岩元です。私はもともと昭和36年種子島の生まれで、島の小学校を卒業以来、43年ぶりに故郷にUターンしてきました。平成元年久留米大卒で同年久留米大小児科に入局し、小児科医として28年間福岡を中心に活動してきましたが、数年前から故郷に戻り小児医療をしたいという気持ちが高まり、ようやく今春4月、帰ることができました。当院赴任前は、福岡県飯塚市の麻生飯塚病院小児科に12年間勤務していました。私の場合は、行政や病院からの要請で赴任したのではなく、あくまで自らの意志で故郷に戻り、無理をお願いして病院小児科医として雇用して頂いた形となっています。

〇病院紹介

私が勤務する種子島医療センターは、昭和44年に開設者であり地元の種子島出身であられる田上容正(たのうえよしまさ)先生が内科医院として開業され、以後医院から病院へと、島で随一の総合民間病院(病床数200床、常勤医20名、職員数450名)にまで発展してきました。昨年(平成28年)4月、田上病院から種子島医療センターに名称変更致しました。鹿児島大学との密接な提携があり、医師の派遣元にもなっていますが、自ら希望で来られる医師も増えてきているようです。職員も島外、県外から多くの人材が集まっています。

小児科は鹿児島大小児科より2名派遣されていましたが、この度私が赴任したことにより、人口3万人の島に小児科医が3名体制となりました。病院小児科としては入院と外来の一般診療だけでは小児科医2名で十分の体制ですが、小児科医は不足していないにも関わらず、病院側の寛容な計らいで私のわがままを聞いて下さり雇用していただきました。

〇種子島のメリット

離島とは言え、種子島は鹿児島県の数ある離島の中でも最も恵まれた島であると言えます。地理的には最も本土に近いこと(鹿児島市から110キロ、大隅半島佐多岬から40キロ)、交通の利便性が格段に良くなったこと(特に高速船の導入)、地域中核病院として大学(鹿児島大学)と鹿児島市内の大病院との提携が密であり、受け入れ機関にも恵まれ、重症患者は航空搬送(ドクターヘリや自衛隊ヘリを利用し30分で鹿児島に搬送)も容易なこと。当院の医療レベル(医療機器、電子カルテシステムなど)が高いことなどが挙げられます。

デメリットとしては、島の住民は、医療レベルに関しては種子島より鹿児島の方が高いと認識しており、当方の医療で不満だったりすっきりしない時はこっそり鹿児島に上ってしまうことが多々あるようです。当の私も赴任して1ヶ月の内に、私が外来でみた2名の乳児が、信頼されていないのか、紹介なしにこっそり鹿児島に行かれてしまったことを経験しました。

〇島の医療で思うこと

地域医療の大きな課題になっているのが少子高齢化対策かと思います。高齢化に対する医療施策は「地域包括ケア」に代表されるように医療と行政、福祉が密接に絡んでいることです。ところが少子化対策はどうでしょう。予防接種の公費化や医療費助成、保育園問題(待機児童)等の対処が関の山ではないでしょうか。増え続ける高齢者に対し、減り続ける子ども達に何ができるのか?子どもたちが病気になった時の対応だけでなく、病気にならないようにする予防医学の充実や発達障害等の子どもも増えてきていることより、子育て支援ができるような体制作りを行政、福祉と連動して取り組んでいく必要があるかと思います。

〇小児科医のアイデンティティーは?

離島へき地などの地域医療に必要な人材としては、大人も子どもも診れて、外科系も内科系も概ね対応可能な総合診療医(ジェネラリスト、家庭医)が最も必要とされる医療人かと思います。特に家庭医療の分野ではバイオ(身体的)、サイコ(心理的)、ソーシャル(社会的)といったものを俯瞰的に診れる医師を養成しており、このような人材こそが離島などのへき地医療には最適の人材であると言われています。

小児科医ができることは何なのか? 小児科医は、小児の全般的なことは診れるものの成人特に高齢者の診療に関してはどうみても心許ない存在です。高齢者が多い離島・へき地で小児科医が求められるものは何なのか?自分の故郷に戻り、まだ一月ほどしか経っていない時点での考えではありますが、子どもが少ないながらも小児保健、母子保健分野での地域再生に小児科医の生き残る道が開けているものと思います。予防接種の普及もあり、かつてのような子どもの重症感染症は明らかに減ってきており、一般小児科医は重症の子ども達を診ることが少なくなりました。離島、へき地で数少ない子ども達に小児科医としてできることは何があるのか?妊娠から出産、成長にかけての子育て支援を充実させることで、安心安全の地域を作りながら、小児保健、母子保健分野で絶対的安心感を醸成させることが小児科医の務めだと思っています。