奄美ドクターヘリは群島の医療を俯瞰することになった

鹿児島県立大島病院救命救急センター 原 純

1.はじめに

鹿児島県立大島病院救命救急センター原純ともうします。
古川先生よりドクターヘリをテーマにお伝えする機会をいただきましたのでこの場で少しお話をさせていただこうと思います。

2016年12月27日奄美ドクターヘリが運航開始し、3年目に突入しました。ドクターヘリとは医師/看護師を救急現場に投入することとで、救急現場から治療を開始し今まで救命困難だった患者さんや重篤な後遺症を残してしまっていた患者さんの救命、後遺症軽減を目的とした救急医療専用ヘリコプターです。

ドクターヘリ導入および救命救急センターの開設により病院内外の救急医療を取り巻く環境は劇的に改善したと体感しています。以前10年以上前に私が瀬戸内徳洲会病院で働いていた時には救命ができなかったような多発外傷の出血性ショック患者さんが救命され、院外心肺停止の心筋梗塞患者さんが社会復帰できるような症例が増えて来ています。私も奄美出身の妻を持ち、4人の子供全員が島で生まれ育っていっている中で、救急医療の充実は島で生活していくことの大きな安心材料となっています。

2.変化しつつある島人の死生観

しかし、その一方で、以前は島だからこれ以上は難しいと、島の人たちはあるところで自分たちの体の限界を受けいれていたように感じていました。ドクターヘリが導入され島から出るハードルが下がり、島から出て治療を受ければまだ生きることができると言うことを知ってしまいました。そのため、自分の病、老いに対する死生観が揺らぎ始めているように感じます。もちろん、濃厚な医療、専門的な医療を受ければ救命される人もいます。それは素晴らしいことです。しかし、島から外に出たものの、病状は思うように改善せず、島に戻ることができない、島に戻る際にとても大きな労力を要するという症例も経験するようになり、そのような症例は年々増加している印象です。また、高齢になればなるほど年齢による変化として避けられない疾病も増えてきます。それを病気と考え精一杯治療をするか、それを加齢と考えて人生の自然の流れとして受け入れるかという選択は決して二者択一ではありません。それでも全体の大きな流れとして、徐々に自然な加齢変化を病気としてして捉えるようになり、そこに医療を介入させないことは良くない事である。という考え方が浸透しつつあることをドクターヘリ運航の中でも感じる機会が増えてきました。ドクターヘリでの搬送に限らず、島から出て、医療を受けるという選択が、その患者さんの人生を最も豊かなものにするかという選択はより慎重であるべきであると、私は感じるようになりました。

島に生まれ、島で育ち、島で老いて行く中で、医療とどのように関わっていくべきかということを島の人ひとりひとりがもう一度考えることが必要な時期であると感じています。

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